ミスルトゥ(ヤドリギ)の不思議な生態

時々、意外なところにポツンと植物が生えているのを見つけますが、それは野鳥が運んでくる場合があります。
野鳥が落とした糞の中に、植物の種子が混ざっているからです。
空中から運ばれ着地する植物ですが、なかには地上でなく樹の枝に定着し、生長する植物も存在します。

ミスルトゥ(ヤドリギ)は、その名のごとく「木に宿る植物」であり驚くべき神秘的な生態を持つ植物です。
ヤドリギの果実は多糖類(粘液質)を豊富に含むため、果実を食べた鳥は、糞が粘ってお尻から離れなくなるので樹の枝にこすりつけます。
そのため枝から発芽しますが、反対に地面からは発芽しないそうです。
ヤドリギはビャクダン科です。
ビャクダンといえば半寄生の植物、始めは独立して生育し、生長するにつれて根先を宿主の根に寄生し、養分や水分を奪っていくのがビャクダン(白檀、サンダルウッド)の生態です。
ミスルトゥ(ヤドリギ)も同じく半寄生植物です。
最初こそ水分や栄養分を貰いながら育ちますが、自分の葉でも光合成をするため完全に寄生することなく宿主を枯らすことがありません。
鳥の巣にも見え、マリモのように丸い形状に育ち、とても愛らしい姿です。
花言葉は「忍耐」「困難に打ち勝つ」「永遠の命」。
ヨーロッパではクリスマスにヤドリギを飾る習慣があります。

また、含有成分のレクチン類の抗がん作用が注目されています。
ヤドリギ製剤に「イスカドール」という医薬品があり、ヨーロッパではがん治療において、比較的メジャーな補完代替療法の一つになっています。
体温上昇、免疫賦活、うつなど精神症状の改善、標準治療の副作用の緩和などが期待でき、ハーブ療法の進んだドイツでは保険適応の医薬品です。
基本的には単独で使わず、標準治療を補助するものとして使います。
メジャーな治療と対立するのではなく、自分の立ち位置をわきまえ、宿主と共存するヤドリギの生き方そのもののようで、なんとも微笑ましく感じます。
抗がん剤には植物由来のものが数種ありますが、ヤドリギ製剤もいつか保険適応になり、緩和ケアなどで活躍できる日がやってくるかもしれません。

緑の深い季節になるとヤドリギは宿主の葉で隠れてしまうので、落葉した晩秋から新緑が芽吹く季節までが発見のチャンスです。
時には、地面でなく樹上に育つメディカルハーブを見つけてみるのも楽しいですね。